2016年 02月 22日
Mercedes博物館と人優先の都市計画 |
4年前、私が8年間生活していたドイツの街Stuttgartを訪れた時、私の親しい建築の友人夫婦がまず案内してくれたのが、最近建ったというMercedes博物館だった。オランダのBen van Berkelが国際コンペで勝ち取り、2006年に実現した建物で、車のデザイン方法を建築に取り入れたような近代的建物だった。内部はスロープ型式で二重の螺旋状になっていて、人と車を一緒に誘導している。所によっては壁に車が展示されていたり、壁のレールを走るむき出しのエレベーターが動き、平面と立面が同時進行のような錯覚を覚える。車好きにはたまらない構成になっている。 丸身を帯びた外観
人と車のスロープ 壁に展示されている車 斜めのスロープに車を展示すると走っているように見える
壁のレールを走る剥き出しのエレベーター
中央広場ー中央奥に建っているのが中央駅の塔、その上にベンツマークが載っている 街の真ん中を走るKoenig Str.(王様通り)は人専用道で車は入らない。 街中心部はどこも人だけ、車はない
日本も車生産大国である。経済発展の為だけではなく、町中では人を守る、まず人優先の都市計画が実現しなければ、本当の意味での車と人の共存はできない。 そのような都市計画が日本では何故できないのか?団体性があり、他人には協力的だとされる日本人は、自己主張の強い個人主義の欧人よりずっと人を思いやる都市計画が出来るはずであるが、現実は反対である。 ヨーロッパに行くといつもこの矛盾に突き当たる。
渋谷区の建築設計事務所−松井建築研究所
ここStuttgartは、中央駅の屋根にベンツマークがついているくらい、ベンツとポルシェで有名な街である。だからと言って新しい街でなく、古い歴史ある街で古い建物も沢山残されている。すり鉢型の地形を利用し、底の平地に街の中心があり、古い城、オペラハウス、コンサートホール、ショッピング通りなどがある。80年程前からこの中心部には、車を入れない歩行者道として整備されており、今回訪れた時にはその範囲がもっと広くなっていて、ほとんどの住民は街に出るときは車を使わず、公的交通機関=路面電車やバスを利用する。その大きさはちょうど新宿中心部位で横は伊勢丹から西新宿さらに都庁くらいまで、北は歌舞伎町、南は高島屋タイムズスクエアーくらいまでの範囲を全て歩行者専用道としている規模である。人が多く行き来する所には、人に危害を与える乗り物を入れないという合理的かつ当然のことが実現し守られている。
一方ドイツの高速道路は制限速度はなく120~200km/hで走り、無料であることは有名である。高速道路上では車の性能を存分発揮する事ができ、人を気にせず運転を楽しみ集中できる。しかし一旦高速道路から市街地に入ると一斉にスピードを落し40〜50km/hにして市内に入り、近郊の大型駐車場に車を止め、町中には公共交通機関で入る。この一貫した都市計画によって、人は安心して通勤、買い物ができ、街を楽しく歩きすごす事ができるのだ。
by matsui-ken
| 2016-02-22 17:45
| 都市計画
|
Comments(0)