熱海に行く途中根府川駅で下車し、山を登った広大な敷地に杉本博司設計の江の浦測候所がある。杉本氏は10年かかってこの土地を探し当て、相模湾を臨むのどかなみかん畑に彼の大宇宙を自費で作った。構想から竣工まで20年かかったという。
古代人は海から登る太陽を信じ、そこから得た生命力で建造物を作ってきた。冬至、夏至そして春分と秋分を再体験できる場所として、杉本氏は日本の古来からある伝統工法と現在工法を駆使し、江の浦測候所と銘打ち、2017年10月に公開した。
杉本博司は元々古美術商から始まり、写真家であり、アーティストで建築も料理もする。ニューヨークに住みながら、もっぱらその熱い視線は日本に向けられているようだ。
ここの魅力の一つに石がある。近くに石切場があり根府川の巨大な石も使われているが、また貴重な古墳時代からの考古遺物や古材も再使用されている。一体一体の貴重な石が意識的に置かれ、見学者がこの大宇宙を散策できる庭園美術館になっている。
全部で50体ものオブジェがあるようだが、その一部を紹介する。
元々は鎌倉の明月院の正門が長年廻り廻って根津美術館の正門として使用されているいたものを、解体修理され再築された。
夏至光遥拝100メートルギャラリー
名前の如く夏至の太陽を拝む為の建物
100m続く大谷石の壁、敷地を一気に海へと貫き、夏至の太陽が一気に差貫く
大谷石の反対側はガラスが貫く。構造の柱はない。片持ち梁で100m貫く
大谷石とガラスのギャラリー、杉本氏の海と空の写真作品が並ぶ。
大谷石塊のディティール
ギャラリーの先まで行くと海へと出る
根府川石 浮橋 ー これらの巨石は地表からわずかに浮いている
夏至光遥拝ギャラリーの先はさらに12mキャンティとなって海にせり出している。
冬至光遥拝筒の屋根 70mのさび鉄の筒が海にせり出す
その冬至光遥拝筒の中間に井戸がある
ここを冬至の太陽が貫く。今年は12月22日日の出6時48分
夏至光遥拝100メートルギャラリーの先のキャンティ
冬至光遥拝筒の先のキャンティ
周りはのどかなミカン畑ー今がちょうど収穫時だった
海と空の水平線
石舞台
三角塚ー先の頂点は春分秋分の時の正午の太陽の方角を示している、とか
この江の浦測候所は神奈川県と小田原市の協力を得て、杉本氏は公益財団法人小田原文化財団を設立し、ここで色々な芸術活動を行なっている。
氏亡き後も永遠にこの測候所が生き続ける用意が既にされている。
私たちが訪れた日は平日であるにもかかわらず、送迎バス一杯の見学者だった。(要予約制)